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絶句… [歴史]

ブログ・渡辺邸1.jpg  

  今週は目が回る忙しさ。しかも、明日から仕事を兼ねて宮崎へ。疲れ切っているのと、落ち着かないのとで、本を読む気にすらなれない。

  そんな時には往々にして悪い知らせがやって来るものだ。何回か前の記事「2・26事件の残像」で触れた、東京都杉並区上荻の渡辺錠太郎邸=写真=が、老朽化のため取り壊されるという。

  27日付の「読売新聞」武蔵野版によると、扉やふすまなど建物の一部を杉並区がひきとり、資料として保存するものの、27日から解体工事に入り、土地は売却されるとある。「2・26事件の残像」では、「今も人が住んでいるようだ」と書いたが、錠太郎の長男、誠一さんが3年前に亡くなってからは、空家になっていたという。

  うかつにも知らなかった。壊される前にひと目でいいから内部を見たかった。帰省で解体工事も見に行けない。ただただ絶句、である。

  前にも述べたように、渡辺邸は「江戸東京たてもの園」の高橋是清邸とともに、歴史を生に近い状態で味わえる貴重な場だ。解体前に希望者の見学を許すなどの措置はとれなかったのだろうか(とったのかもしれないが)。長い目で見れば区の重要な観光資源になると思うのだが。

  繰り返すが、日本には歴史を体感できる場が少ない。例えばたくさんの歴史的建造物がある京都でも、幕末関係に限ると当時の面影を遺している建物はほとんどない。あの寺田屋でさえ、20世紀に立て替えられたものであり、龍馬が遭難した建物とは異なる(場所も少し移動している)。池田屋は大正時代に取り壊された。あるのは記念碑ばかり。  

 歴史的建造物を失うことがいかにつらいかは、南大門の火災でソウル市民が見せた反応を見れば分かる。  

 日本で数々の歴史的建造物が取り壊されてきた背景には、木造建築が多く、事件の際に燃えてなくなったり、その後の維持が難しいこともあろう。だがそこに、遺すことへの意識の低さがないとはいえない気がする。

  今回の記事では、解体に至った詳しいいきさつには触れていない。予算の都合など、やんごとなき事情があるのだろう。区が建物全体を買い取らなかった理由は分からない。誠一さんの次男の方は、「残したい気持ちは強かったが、個人では限界がある。歴史を伝える資料として、区が保存してくれるのはありがたい」とコメントを寄せられている。

  返す返すも残念としかいいようがない。今はただ、これを機に遺すことへの意識が高まれば、と願っている。


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