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再び南へ・その2 [旅の記録]

 上海は、東京を除けば世界で一番好きな都市かもしれません。歩いていると大量の古い洋館に出くわし、歴史的な出来事に関連している場合が少なくない。〝本場〟西洋に比べて建物の完成度が低く、どことなく富を誇示するかのような、子供っぽさを漂わせている点もそそります。

 上海に行かれたら、ぜひともまだ暗いうちに起き、魔都と呼ばれた時代を想像しながら朝靄に包まれた誰もいない雑踏を歩いてみて下さい。 きっとおすすめする理由が分かるかと思います。

 戦前の上海には、フランス租界と、英米の租界をまとめた国際共同租界がありましたが、さらに日本租界と呼ぶ地域もありました。正式なものではなく、日本人が多く住んだ北部一帯を便宜的に呼びならわしたものです。ブロードウエイマンションから四川北路という大きな道路を北上し、魯迅公園に至る、虹口(ホンキュー)と呼ぶ一帯が中心になります。

 短期滞在も含めると、現在の上海には10万人を超える在留邦人がいるそうです。これは戦争直前の最も多かった時期にほぼ匹敵する数字です。ただし、戦前の上海は今ほど人口が多くなかったので、当時の方が日本人の姿は目立っていたと思われます。和装の人も多かったですしね。日本租界は洋風建築が多いながらも生活は内地とそれほど変わらず、不自由することは少なかったみたいです。そういった異文化が混在した時代の名残が感じられるのもこの街の魅力です。

 四川北路沿いには古い建物が比較的多く残されており、下調べしなくても重要な建物かどうかが何となく分かります。

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 これはニューアジアホテル(新亜大酒店)。1934年竣工の当時有名だったホテルです。当時としては珍しく、売春やアヘンの吸引を厳格に禁じていたとか。
           
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 このファミマがあるビルには日本の憲兵隊本部がありました。現在は中国銀行の宿院宿舎になっているようです。

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 さらに北へ進むと、右手にあるのが永楽坊というアパートのような建物。実は、この一角に梅機関がありました。梅機関は陸軍の影佐禎昭が率いた特務機関です。自民党の谷垣さんのおじいさんですね。

 梅機関は国民党の超大物だった汪兆銘を引き抜き、南京政府を樹立させるうえで大きな役割を果たしました。皮肉にも、このことが中国との和平のラストチャンスをつぶしまう結果となってしまいました。

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 実験中学校。面白い名前ですね。ここは昔、最初の日本人学校である北部日本人小学校でした。1917年建設だそうですが、残念ながら中に入れず。

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 さて、少し北へ進むと、左手に多倫路(ドゥオルンルー)文化名人街の入り口があります。ここにもファミマが…なんかやけに増えたなあ。

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 多倫路文化名人街は長さ約550メートルの路地で、魯迅や郭沫若、郁達夫といった文化人にちなんだ建物が並んでいます。完全に観光地化されていて、立派な建物ばかりで、こぎれいすぎるのがかえって気に食わない。郁達夫には興味があるけど、時間の都合もあり、ぶらっと歩いただけで終了。

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 ただし、普通に歩く分には見所が多いので、中国の歴史や文学に馴染みのない人でもそれなりに楽しめるかと思います。 
            
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 店主の内山完造が魯迅をかくまったりしたことで知られる内山書店のあった場所です。内山書店は魯迅以外の中国の文化人も集ったサロン的な存在でした。彼がいなかったら、20世紀前半の中国文学はずいぶん寂しいものになっていたと思います。

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 内山書店の近くには、上海海軍特別陸戦隊本部のビルもありました。日本海軍唯一の陸戦隊で、第一次、第二次上海事変で大活躍した部隊です。

 1929年竣工だったかな。ニューアジアホテルなんかもそうですが、ほぼ同時期のアール・デコとは明らかに一線を画していて装飾はありません。実用重視で人間味がない分、いかつく、不気味にも感じます。

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 おまけ。日本車やドイツ車に比べるとまだまだとはいえ、中国車もかなりマシになってきた気がします。シエンタ、アルファード、コペンと、日本メーカーが相変わらず最低なデザインの車を生み出し続けていることを考えると、遠からず追い抜かれる日が来るのかもしれませんね。


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