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お龍と人斬り半次郎 [歴史]

 歴史好きにもかかわらず、大河ドラマはほとんど見ないのですが、その恩恵に浴する出来事がありました。
  
 影響力のある大河ドラマは出版業界にとって一大イベント。特に昨年の「龍馬伝」は、坂本龍馬と福山雅治さんという、人気者どうしの取り合わせだったこともあり、いつも以上に関連本を目にしたように思います。
  
 おかげで、普通ならテーマが地味すぎて出版できないような本が書店に並んだり、高価すぎて手が出せなかった本が新書や文庫本として復活することも。今回、特にありがたかったのは、お龍の回想録が新書として出版されたことでした。

ブログ・お龍.jpg
         (お龍とされる写真ですが…最近は別人説が有力に) 
                     

 お龍さんもかなりの有名人ですから、回想録がとっくに出版されていてしかるべきはずなのに、なぜか今まで単行本すら存在していませんでした。龍馬ブームのおかげてそれが簡単に入手できるようになったのです。しかも新書で。「わが夫 坂本龍馬」(朝日選書)という本がそれです。
   
 戦国時代と並んで歴史ファンの多い幕末ですが、人気の割に日記や回想録といった一次資料の文庫本や新書は少ないように思います。有名どころだと田中光顕の回想録やアーネスト・サトウの日記、龍馬の手紙をまとめたものぐらいでしょうか。
     
 「わが夫 坂本龍馬」は回想をそのまま掲載しているわけではなく、「反魂香」や「千里駒後日譚」といった生前の聞き書きを集め、読者が理解しやすいよう、三人称を一人称にしたりして、整理し直したものです。それでも本人の性格や考え方がストレートに伝わってくる点、回想録と変わりません。
   
 正直言って、お龍の回想は一冊の本としては出版されていなかったとはいえ、さまざまな本で部分的に取り上げられているので、購入時はさほど期待していませんでした。買うのが遅れたのもそのためでした。けれども読み進めてみると、知らなかったエピソードがけっこうあり、目から鱗が落ちる思いでした。
    
 中でも面白かったのが、中村半次郎との出来事です。お龍が寺田屋で「お春」として働いていた時分というから、慶応元年ごろのことでしょう。何と、中村がお龍に関係を迫ったというのです。
    
 この日、仲間の薩摩藩士とともに寺田屋で泥酔した彼は、店の者が誰も酌をしないのに腹を立て、あたりかまわず皿を投げつけるなどして暴れていました。そこで「私が静めて参りましょう」と、彼のいる二階の部屋へ上がって行ったのがお龍。無言で彼のそばに座り、いきなり手酌で5杯、6杯と酒を飲み干すと、
    
 「暴れたってしょうがないじゃありませんか。つまりはあなたの器量を下げるばかりですよ。今夜は私がお相手をいたしますから、充分召し上がってください」
     
 とキツ~イ一言。気を呑まれた中村は言われるままに酒を酌み交わし、ついには酔い潰れてしまいました。
        
 ところがその夜更け。中村は女にしてやられた悔しさからか、はたまた器量良しのお龍を気に入ったのか、お龍の部屋に侵入するなり手を掴んで、
      
 「こら!貴様は今夜は俺の寝室へ来て寝ろ!」
      
 と脅し始めました。

 これに対し、気の強いお龍さんは一歩も退きません。龍馬の名を持ち出さずに、
         
 「冗談言っちゃいけませんよ。寺田屋のお春ですよ。宿場女郎とは違いますからねえ。人を見て法を説いてください」
    
 そう見事に啖呵を切ってみせたのでした。
       
 でもその瞬間、彼女が身に着けていた短刀が床にポトリ。それを見た中村は、
        
 「女のくせに短刀なぞを持っておるは怪しいぞ。よくよく取り調べる件があるから、俺といっしょに来い!」
       
 と激昂し、仲間がいる部屋へとお龍を引っ張り込みました。いよいよピンチです。

 ところが、結果的にこの短刀が彼女を救うことになります。

 二人がそのまま言い合いを続けていると、短刀を見て何か思い出したらしい仲間が慌てて中村の袖を引き、
         
 「ありぁ土州の坂本龍馬の妻だ。僕はこの短刀に見覚えがある。君、とんだことをしたなあ」
          
 と言ったから、さすがの中村も青ざめたことでしょう。翌日お龍をご馳走して、
         
 「どうか昨晩のことは坂本氏には内証にしてください」
         
 と平身低頭で頼み込んだとか。
              
 他愛のないエピソードといってしまえばそれまでですが、もしもこの件が広まれば中村は切腹させられていたかもしれません。そして、西南戦争の行方にも少なからず影響を及ぼしたのではないでしょうか。
         
 それにしても、人斬り半次郎に真っ向から立ち向かうとはお龍さん、強すぎです(^-^;)

*少しだけ表現を変更していますが、基本的な内容はこの通りです。


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