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とうとう終わりか… [お気に入り]

 バッティングセンターの回で触れるのを忘れてました。

 これです。

ブログ・クロスゲーム.JPG
                       

 昨年ずっと目が見えず、活字が読めなかったなか、漫画だけは虫眼鏡を使えばかろうじて読めました。それで10年ぶりに読み、あらためてはまったのが、あだち充作品。代表作の「タッチ」をはじめ、「ナイン」「みゆき」「ラフ」「H2」「KATSU!」等々。そして、クライマックスを迎えている「クロスゲーム」。気がついたら短編以外、すべて大人買いしてました…。
       
 もう読まれた方はご存知でしょうが、「クロスゲーム」のヒロインである月島青葉の家はバッティングセンターで、青葉の幼馴染である主人公の樹多村光は幼いころからここのマシンでバッティング技術を磨いてきました。その経験がクライマックスになっていかされたわけですが…ネタバレになるのでやめておきます。

 この作品、私のように「タッチ」をリアルタイムで読んだ世代は特に、薄味な印象を受けるみたいです。「タッチ」はそれ以前に一世を風靡した劇画ほど浮世離れしておらず、軽い、コメディータッチで物語が進行しつつも、和也の死をはじめ、劇的な要素がいくつも盛り込まれていて、ストーリーに抑揚が効いた印象。これに対し、クロスゲームは全体的に淡々としていて、野球の試合内容は手に汗握るほどではなく、肝心の恋愛描写すら控えめに見受けられます。

 時の経つのは本当に早いもので、あだち先生もすでに還暦間近とか。読者の中には、この薄味を「劣化」ととらえ、食い足りなく感じている方もいるみたいです。

 でも私はそうは思っていません。小説などを含め、同じ作家の作品は加齢とともにシンプルさを増す傾向が強いように思います。それは体力的理由のためではなく、むしろ完璧さへのこだわりが深まるからではないか、と。

 今回、久々にサンデーを読んで、「ずいぶん絵のうまい漫画家が増えたなあ」と感心した半面、みんなごちゃごちゃしすぎていて、心に入って行かない印象を受けました。一方、ストーリーを含め、余計な描写をギリギリまでそぎ落としつつ、きちんと成り立っている「クロスゲーム」はちょっと別格というか。さすがはベテラン、という感じです。

 あだち作品の表現が変わってきた背景には、「タッチ」でひとつの完成形に達したため、次の完成形を追い求めたい、との考えがあったのでしょう。あと、「タッチ」が登場した80年代と違い、読者が現実にはありえない漫画の劇的なストーリーに慣れきってしまったので、陳腐と受け取られないようリアリティーを増し、表現を抑えめにしているのかもしれません。それだけ漫画という芸術様式も成熟化したのでしょう。「タッチ」には「こんな青春ね~よ」と思いながらも、大いに心を揺さぶられただけに、もはや漫画でハラハラドキドキする時代ではないのかと思うとちょっと残念です。

 ただ、「クロスゲーム」が面白くないかといえば、全然そうではなくて、むしろ秘められた登場人物の思いを読み取る楽しさがあります。好みにもよるでしょうが、青葉は従来作品のヒロイン以上に魅力的なキャラクターで、これは劣化どころか、むしろ人物描写の腕が上がっている証しなのでは。

 あだち作品ならではともいえる、布石の巧みさ、風景描写などを駆使した「間」も健在。「人物の描き分けができていない」との指摘もあるようですが、そもそもこれだけ多くの作品をヒットさせてきた漫画家がいないなか、ちょっと酷すぎるように思います。
          
 流行りの「自主規制」に流されてか、“お色気”が減っているのだけは残念ですが…。

 と、あまり漫画を読んでいないくせに、エラそうにダラダラ書いてしまいましたが、要するに書き忘れたのは、「『クロスゲーム』のアニメで、『失恋はつかれる』を主題歌にしてほしかった」ということなのです。別にコブクロさんの歌が悪いわけではなく、見てもいないくせに言うのはなんですけど、あまりにもしっくりくるので(詩はちょっと作り変える必要があるでしょうが)。ああ、数行で済む話だった…。

 「クロスゲーム」は休載が多く、待ち遠しくてイライラすることもありましたが、もうすぐ終わるかと思うと本当に寂しい限り。私にとってはこんなに思い入れのある漫画家さん、他にいません。ぜひ引退することなく、これからも活躍していただきたいものです。


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